🍂 圓光寺(えんこうじ)|洛北一乗寺に佇む枯山水と水琴窟の静寂寺

京都・一乗寺にある錦秋の圓光寺の十牛之庭。苔・白砂・紅葉と書院の構図が織りなす静かなる風景。 北白川・一乗寺エリア
画像出典:有料素材サイト「ACフォト」

京都市・洛北の一乗寺にある 圓光寺(えんこうじ) は、臨済宗南禅寺派に属する寺院で、静寂に包まれた庭園と歴史的建造物を有する名刹です。
「十牛之庭」・「奔龍庭」・「水琴窟」などの庭園要素が知られ、特に紅葉シーズンには “赤い絨毯” のように敷き詰められた紅葉の景観が人気を集めます。

一般的な観光ルートから少し奥まった場所にあり、訪れる人も多すぎずゆったりとした時間を過ごせる寺院として、京都通にも好まれています。


歴史と沿革|学問所から禅寺へ、出版文化の舞台

圓光寺の起源は慶長6年(1601年)、徳川家康が、教学振興のために閑室元佶(かんしつ げんきつ)禅師を招いて伏見に「圓光寺学校」を建立したことに始まります。

この学校では僧侶・俗人を問わず学を許し、仏教・儒学の書籍を刊行する「圓光寺版(伏見版)」の木活字が製造されました。

その後、圓光寺は相国寺山内へ移転し、さらに寛文7年(1667年)に現在の洛北・一乗寺小谷町へと移ってきました。

明治維新後には荒廃しましたが、後に尼衆専門道場としての禅寺として再興され、現在は坐禅会や研修道場としても機能しています。

このように、圓光寺は単なる寺院にとどまらず、学問・出版・禅の役割を併せ持つ文化的拠点としての顔を持つ寺です。


宗派・本尊・文化財

圓光寺は 臨済宗南禅寺派 の寺院です。
本尊は 千手観音(伝・運慶作と伝わる像)とされています。

寺内には多くの文化財があります。主なものを挙げると:

  • 木製活字(圓光寺版・伏見版活字):かつての出版設備として使用された木活字が現存。 竹林図屏風(六曲一双、円山応挙筆):絹本着色による作品。

  • 元佶禅師像(開山像):紙本墨画着色。

これらはいずれも、建築や庭とともに圓光寺の歴史的価値を支える要素です。


見どころ①:十牛之庭(じゅうぎゅうのにわ)

圓光寺を訪れたら真っ先に見るべき庭が 十牛之庭 です。
「十牛図(じゅうぎゅうず)」という禅における悟りへの段階を象徴した図を庭で表現したもの。

この庭は池泉回遊式の構成で、池には 栖龍池(せいりゅうち) があり、苔と紅葉に囲まれた草木が周囲を包みます。

庭には「牛に見立てた石」が十ヶ所配され、庭を眺めながら禅の悟りの道を思い起こす構造になっています。

四季を通じて美しさが変わる庭で、特に秋の紅葉時期は赤く染まるモミジが池に映り込み、“額縁庭園”とも称される美景が生まれます。


見どころ②:奔龍庭(ほんりゅうてい)

裏山側には 奔龍庭 と呼ばれる枯山水庭園があります。

この庭では白砂と鋭い岩を用いて、龍が天空に昇るような動きを表現しています。「飛龍」の造形を庭石で見立てた意匠は、禅の力強さと動感を併せ持ちます。

奔龍庭は比較的静かな回廊上から眺めることができ、観光客も比較的少ないため、ゆったりと時間を取って観賞できる庭です。


見どころ③:水琴窟(すいきんくつ)と妙音

本堂前には 水琴窟(すいきんくつ) が設けられており、水滴が反響して澄んだ音を響かせます。

静まり返った境内でこの音を聞くと、心が鎮まり、禅寺らしい空気を肌で感じられます。 
春や秋の静かな時間帯に訪れると、一層その音色が深く染み入るようです。


見どころ④:裏山の展望と東照宮

庭園の奥の山道を登ると、東照宮(徳川家康を祀る祠)があります。

そこからは京都市街が一望でき、庭を見下ろす視点も得られます。
特に秋の紅葉時期など、高台から眺める庭園と市街風景のコントラストが見どころです。

この展望路をたどることで、庭を多角的に楽しむことができます。


拝観時間・拝観料・アクセス

拝観時間:9:00〜17:00(最終受付16:30)
※例年、秋の紅葉期間には早朝特別拝観(別料金・駐車場は閉鎖)が実施されることがあります。

拝観料:(京都府観光ガイドより)

  • 一般:600円

  • 小・中・高校生:300円

住所:京都市左京区一乗寺小谷町13

電話番号:075-781-8025

アクセス方法

  • 叡山電鉄「一乗寺駅」より徒歩約15分

  • 市バス「一乗寺下り松町」下車、徒歩約7分

  • 車:駐車場あり。約25台分(無料 ただし11月中は駐車不可)

拝観の所要時間はおよそ1時間〜1時間半が目安です。


四季折々の見どころ

圓光寺は、四季を通じて異なる佇まいを見せる庭園が魅力です。


桜が庭を優しく彩り、初緑が苔を明るく照らします。 水琴窟の妙音と相まって、柔らかな春の気配を感じられる時間です。

初夏
青もみじの緑が庭全体を包み込み、竹林の風と小鳥のさえずりが心地よい。奔龍庭からの眺めもすがすがしく、深呼吸したくなる季節です。


紅葉が庭を朱に染め、十牛之庭が額縁のように見える様子は圓光寺でもっとも知られる景観。モミジの絨毯と苔、白砂とのコントラストが息をのむ美しさです。


雪化粧した庭、竹林、石組。静けさが際立ち、枯山水庭園の輪郭がくっきりと浮かび上がります。訪れる人も少なく、心静かな時間を過ごせます。


周辺のおすすめ神社仏閣

圓光寺周辺には、徒歩または公共交通で行ける魅力的な寺社が点在しています。以下はそのいくつかです:

  • 詩仙堂(しせんどう):文人・石川丈山ゆかりの庵。静かで風情ある庭園が楽しめます。

  • 曼殊院門跡:皇族ゆかりの門跡寺院。枯山水庭園や書院建築が見どころ。

  • 圓通寺(えんつうじ):後水尾天皇の幡枝離宮を寺に。借景庭園が名勝に指定。

  • 東照宮(圓光寺内):徳川家康を祀る祠。庭園を見下ろす展望スポットとしても知られています.

  • 光悦寺:芸術家本阿弥光悦ゆかりの寺。鷹峯にあり、自然と文化の調和を感じられる場所。

これらの寺社とあわせて巡ると、洛北一乗寺〜修学院あたりの静かな文化散策ルートが完成します。


トリビア・見どころの背景

  • 圓光寺の庭にある 十牛之庭 は、禅における悟りの十段階「十牛図」をモチーフに庭造りされており、庭石が牛の姿を象るように配石されていると伝えられます。

  • 古くから出版文化と結びついており、圓光寺版(伏見版)活字で孔子家語や貞観政要などの書籍が刊行されました。

  • 圓光寺内には、竹林があり、若き画家・円山応挙もこの竹林を描いた作品を残しています。


まとめ|静寂と庭園美が調和する洛北の隠れた名刹

圓光寺は、京都中心部の喧騒を離れ、自然と禅の調和を感じられる寺院です。
書院から眺める庭園、竹林、展望路、そして音を響かせる水琴窟――これらの要素が重なって“静かなる美”を醸し出しています。

紅葉シーズンの混雑を避けつつ、じっくり庭を感じたい方には特におすすめです。
洛北一乗寺・修学院あたりを散策する際は、ぜひこの圓光寺を訪れてみてください。

 

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