◆ 大覚寺とは ― 嵯峨天皇の離宮を受け継ぐ、雅な門跡寺院

京都・嵯峨野に広大な伽藍を構える 大覚寺（正式名称：旧嵯峨御所大本山大覚寺） は、平安時代の面影を色濃く残す格式高い寺院です。真言宗大覚寺派の大本山であり、皇族が住職を務めた 門跡寺院 として知られています。

境内に一歩足を踏み入れると、静かな水辺、広がる回廊、雅やかな建築が調和し、まさに “平安の雅そのもの”。嵯峨天皇の離宮を起源とするため、一般の寺院とは異なる美意識が随所に感じられます。

◆ 大覚寺の起源と歴史 ― 嵯峨天皇と弘法大師、二人の巨星が関わった寺院

大覚寺の歴史を語る上で欠かせないのが 嵯峨天皇 と 弘法大師空海。
平安初期、嵯峨天皇が離宮として整えた地に、空海が “般若心経の功徳” を説いたことから、大覚寺は 心経（般若心経）信仰の中心地 として発展しました。

その後、嵯峨天皇が没すると離宮は寺院として整備され、大覚寺 が成立。以降、皇族や貴族との結びつきが強く、歴代住職は多くが皇族出身。門跡という格式を保ちながら、国の儀式や重要な祈願を担ってきました。

特に鎌倉末期から南北朝期にかけて、大覚寺は政治の舞台にも関わり、「大覚寺統」と呼ばれる皇統の中心となりました。歴史の大きな流れに常に関わり続けた寺院と言えます。

筆者撮影

◆ 大覚寺の見どころ

▶ ① 宸殿 ― 大覚寺の中心となる優美な建築

大覚寺の中心伽藍であり、儀式や重要行事が行われる場所が 宸殿（しんでん） です。
内部は清澄な空気が漂い、襖絵や天井絵など、京狩野派の絵師・狩野山楽による雅な装飾が並びます。

筆者撮影

宸殿から周囲の建物をつなぐ回廊を歩くひとときは、大覚寺ならではの見どころ。雨の日でも濡れずに歩ける造りで、静かな庭園や池を眺めながらゆっくりと境内を巡ることができます。

▶ ② 大沢池 ― 日本最古の人工庭湖として名高い水景

大覚寺といえば、日本最古の庭池として知られる 大沢池。
嵯峨天皇が唐（中国）の庭園を参考に造営したと伝わる 大規模な庭湖 で、平安貴族が舟遊びを楽しんだ場所としても有名です。

春は桜、夏は睡蓮、秋は紅葉、冬は静寂の水鏡と、季節の表情が豊か。池の周囲を散策すると、平安の宮廷文化を体感できる落ち着いた景色が広がります。

筆者撮影

大沢の池は本当に広いですよ。写真を撮影しながらゆっくり回ると３０分くらいかかります。

池の深さはどれくらいか知りませんが、トラックも重機も無い時代によくこれだけのものを造成したものだと感心してしまいます。天皇の権威は絶大だったんですね。

▶ ③ 心経殿 ― 心経信仰の中心

大覚寺は “写経の寺” としても知られ、写経道場の中心が 心経殿 です。

特に人気なのは丁寧に用意された筆で般若心経を写す「写経体験」で、料金は1,000円だったと記憶してます。
観光客だけでなく、近隣の方や信仰者など、日常的に多くの人が訪れます。

私が訪れたときも何人もの人が写経をしてみえました。

私は時間がなかったので写経はしませんでしたが、ここでの写経は「祈り」「願掛け」「精神集中」など様々な目的で行われ、観光と修行の中間のような独特のひとときを味わえそうですね。

筆者撮影

▶ ④ 勅使門・観月台 ― 皇室ゆかりの象徴

大覚寺の正門にあたる 勅使門 は、皇室の勅使のみが通ることを許された格式ある門。
その横にある 観月台 から見える大沢池は、月見の名所としても古くから愛されてきました。

中秋の名月には「観月の夕べ」が開催され、灯籠に照らされた池の水面に月が映る幻想的な景色は、まさに雅の世界そのものです。

筆者撮影

さすがに皇室の勅使が通るだけあって、ここが一番豪華でしたね。

◆ 大覚寺の御朱印

大覚寺では複数の御朱印が授与されています。
代表的なのは、

不動明王
五大明王
季節限定御朱印（数量限定）

などがあり、数量限定のものは値段は高いですが人気です。

書き置きもありますが、御朱印帳へ直書きしていただけるものもあります。

◆ アクセス情報

所在地：京都市右京区嵯峨大沢町4

最寄り駅：JR嵯峨嵐山駅（山陰本線）から徒歩約16分。

最寄りバス停：大覚寺バス停（京都市バス28号系統）から徒歩約9分。

◆ 拝観料

（令和８年４月より料金が改定になります。）

◎お堂エリア

大人：500円（令和８年４月１日より800円)
小中高生：300円（令和８年４月１日より400円)
（行事や季節により変動があります）

◎大沢池エリア

大人：300円（令和８年４月１日より500円)
小中高生：300円（変更無し)

◆ 周辺のおすすめ神社仏閣（徒歩圏・セットで楽しめる）

◎ 清凉寺（嵯峨釈迦堂）

国宝の釈迦如来像を祀る名刹。大覚寺から歩きやすく、参拝者も多い定番スポット。

◎ 祇王寺

平家物語ゆかりの尼寺で、苔庭が美しいしっとりした寺院。

◎ 野宮神社

縁結び・良縁で有名。嵯峨野散策と相性がよく、黒木鳥居が象徴的。

◆ 大覚寺のトリビア（豆知識）

★ トリビア①：大覚寺は “天皇が書いた般若心経” を伝える寺

空海、橘逸勢（たちばなのはやなり）と並んで日本三大達筆に数えられる嵯峨天皇が自筆で写経した般若心経を所蔵し、心経信仰の中心になっています。

★ トリビア②：大沢池は “日本最古の名勝庭園” のひとつ

平安貴族が舟遊びをしたことが記録に残る、極めて珍しい庭園です。

★ トリビア③：「大覚寺統」の中心として皇位継承に関わった寺

歴史の授業で学ぶ「南北朝時代の二つの皇統」の片方が大覚寺を拠点としていたという、非常に重要な歴史をもつ寺です。

大覚寺統は南朝に属し、最終的には南朝の後亀山天皇が北朝の後小松天皇に譲位したんだったですね。

おまけ

大覚寺の宸殿に向かう回廊にカラスがいて、カァカァと私に向かって鳴いてきました。

筆者撮影

自分の眼の前で鳴くカラスは「努力が報われる前兆」と言われているので、「ラッキー、現れてくれてありがとう」とそのカラスにお礼を言っておきました。

報われたのかなぁ？

◆ まとめ ― 平安文化を体感できる格式ある癒しの寺院

大覚寺にはほかにも護摩堂や閼伽堂（あかどう）、名古曽滝跡や天神社やちょっと新しい心経宝塔など見どころがたくさん。

そんな大覚寺は、歴史の深さ・景観の美しさ・皇室ゆかりの格式 の三拍子がそろった、京都でも特別な寺院です。
大沢池の静けさ、宸殿や回廊の優雅さ、そして写経の厳かさ。観光はもちろん、心を落ち着かせるために訪れる人も多い場所です。

嵯峨・嵐山エリアの散策と組み合わせると、京都らしい深い時間を過ごせるでしょう。

ただ大覚寺はとても広いので、時間的な余裕をみておかないと駆け足での見物になってしまいます。

私も参拝にかける時間を２時間取っていたいたんですけど、ゆっくり見ていたら結局半日かかってしまい、次の予定をキャンセルしなければなりませんでした。

規模の大きな神社や仏閣に行くときには、やはり半日はかかると思っていたほうがいいですね。