京都・東山にある「六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)」は、平安時代から庶民に親しまれてきた古刹(こさつ)です。
踊り念仏で知られる開山・空也上人、そして平清盛が暮らしたと伝わる地としても有名で、宗教と歴史の香りが色濃く残るお寺です。
観光名所・清水寺や建仁寺にも近く、東山散策の途中に立ち寄るのにもぴったり。
今回は、六波羅蜜寺の歴史や見どころ、アクセス方法、そして周辺のおすすめスポットまで、じっくりとご紹介します。
六波羅蜜寺の歴史と由緒
六波羅蜜寺は、天歴元年(947年)、空也上人によって創建されたお寺です。
正式名称は「補陀落山(ふだらくさん)六波羅蜜寺」。臨済宗建仁寺派に属しています。
「六波羅蜜」とは、仏教の修行で悟りに至るための六つの徳目――布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧――を指します。
この教えに基づいて、空也上人が民衆救済を目的として建立したのがこのお寺でした。
創建当初は、疫病が流行していた時代。空也上人は自ら薬を作り、踊りながら念仏を唱えて人々に布教したと伝えられています。
その姿が後に「踊り念仏」と呼ばれるようになり、日本各地に広まっていきました。
また、平安末期には平家一門がこの地に住居を構え、平清盛が政治の拠点としたことから、「六波羅」は当時の京都を代表する地名となりました。
そのため、六波羅蜜寺は“宗教と権力の交差点”でもあったのです。
見どころ①:空也上人立像(くうやしょうにんりゅうぞう)

画像出典:有料素材サイト「イラストAC」
六波羅蜜寺を訪れたら、まず見逃せないのが重要文化財の「空也上人立像」です。
鎌倉時代の彫刻家・康勝(運慶の四男)の作で、空也上人が口から六体の阿弥陀仏を吐き出す姿を表しています。
これは「南無阿弥陀仏」の六字を具現化したもの。
口から仏が出てくるという斬新な表現は世界的にも珍しく、日本仏教美術を代表する作品として高い評価を受けています。
そのリアルな造形、そして祈りの姿に、誰もが思わず見入ってしまうことでしょう。
私が最初に見たときは、なにかちょっと気持ち悪かったです。
見どころ②:平清盛坐像(たいらのきよもりざぞう)
もうひとつの見どころは、重要文化財「平清盛坐像」。
平家の棟梁として栄華を極めた清盛が晩年に寄進したとされる像で、現存する唯一の清盛像とも言われています。
像の表情は穏やかでありながら、どこか哀愁を帯びています。
六波羅蜜寺が清盛の屋敷跡に建つとされていることを考えると、平家滅亡の悲劇を見つめるような眼差しにも見えてきます。
歴史ファンにとっては必見の一体です。
見どころ③:本堂とご本尊「十一面観音」
本堂の中央に安置されているご本尊は「十一面観音像」。
これは秘仏で、毎年12月13日から31日までの「かくれ仏開帳」の期間だけ公開されます。
十一面観音は、人々の苦しみや迷いを救う慈悲の仏として信仰されており、病気平癒や厄除けのご利益があるとされています。
年の瀬に行われる特別開帳は、地元の人々にとって一年を締めくくる大切な行事となっています。
見どころ④:銭洗い弁天と開運推命おみくじ
六波羅蜜寺の境内には、「銭洗い弁天」もあります。
ここでは小銭を清水で洗うと、金運が上昇すると言われています。
観光客の多くが財布の中の硬貨を洗っていく人気のスポットです。
また、本堂前の「開運推命おみくじ」も人気。
誕生日を基にした独特の占い形式で、驚くほど当たると評判です。
観光の思い出にもなりますので、ぜひ一度試してみてください。
行事・年中行事
六波羅蜜寺では、年間を通してさまざまな行事が行われます。
中でも有名なのは「空也踊躍念仏(くうやゆうやくねんぶつ)」と「かくれ仏開帳」です。
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空也踊躍念仏:毎年1月1日〜3日に開催。僧侶たちが鉦(かね)や太鼓を鳴らしながら念仏を唱える、迫力ある行事。
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かくれ仏開帳:12月13日〜31日にご本尊「十一面観音」が公開されます。
特に年末の開帳は、古都の静けさの中に響く読経の声が心に沁みる特別な時間。
冬の京都を感じるには絶好の機会です。
拝観時間・拝観料・アクセス
拝観時間:8:30〜16:30(受付終了16:00)
拝観料:大人600円、高校生・中学生500円、小学生400円
住所:京都市東山区五条通大和大路上ル東
電話番号:075-561-6980
アクセス方法:
・京阪電鉄「清水五条駅」から徒歩約7分
・阪急「京都河原町駅」から徒歩約15分
・市バス「清水道」または「五条坂」下車、徒歩約5分
六波羅蜜寺は清水寺や建仁寺にも近く、観光ルートに組み込みやすい立地です。
周辺のおすすめスポット
六波羅蜜寺の周辺には、京都らしい風情が楽しめる見どころがたくさんあります。
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建仁寺:徒歩5分。俵屋宗達の「風神雷神図屏風」や天井の「双龍図」が有名。
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八坂の塔(法観寺):写真スポットとして人気の五重塔。
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清水寺:徒歩10分。京都を代表する世界遺産。
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安井金比羅宮:縁切り・縁結びで知られるパワースポット。
散策ルートとしては、「清水寺 → 六波羅蜜寺 → 建仁寺 → 八坂神社」という順番が歩きやすくおすすめです。
カフェ・食事スポット
観光の合間に立ち寄りたいカフェや食事処も豊富です。
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洛匠(らくしょう):高台寺近くの甘味処。わらび餅が絶品。
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祇園辻利:宇治抹茶を使ったスイーツの定番店。
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スターバックス京都祇園ホテル店:町家風スタバで一息つけます。
古都の風情を感じながら、のんびりとした時間を過ごすのも六波羅蜜寺観光の楽しみです。
トリビア:空也上人の“六波羅クッキー”?
実は六波羅蜜寺では、ユニークな「空也上人グッズ」も人気。
中でも「空也上人のど飴」や「六波羅クッキー」はお土産として評判です。
空也上人の姿が可愛らしくデザインされていて、京都らしいユーモアを感じます。
こうした「敷居の低い仏教文化」も、六波羅蜜寺が長く庶民に愛されてきた理由の一つです。
まとめ
六波羅蜜寺は、京都の中でも特に“人の温もり”を感じられるお寺です。
空也上人の慈悲の心、平清盛の栄華と滅亡、庶民の信仰――。
この一か所に、千年以上の歴史がぎゅっと詰まっています。
華やかな清水寺とはまた違う、静かで味わい深い時間を過ごせる場所。
京都観光で少し落ち着きたいときには、ぜひ六波羅蜜寺に足を運んでみてください。


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