京都・東山の静かな山麓に位置する 泉涌寺(せんにゅうじ) は、一般的な寺院とは一線を画す独特の格式を誇ります。その最大の理由は、歴代天皇の菩提寺として崇敬され、「御寺(みてら)」 の名で親しまれてきたこと。
皇室と深い関わりを持つ寺院は日本でも数えるほどしかなく、その中でも泉涌寺は特に格別。広大な境内には荘厳な伽藍が並び、静寂と気品に満ちた雰囲気が漂います。
訪れると、観光地というよりも“祈りの場”としての空気を強く感じる寺院。まるで平安の宮廷文化に触れるような、凛とした佇まいが印象的です。
◆◆ 泉涌寺の歴史 ― 法道仙人の草創から皇室の菩提寺へ
泉涌寺の歴史は古く、飛鳥〜奈良時代にかけて活躍した高僧 法道仙人 によって開かれたとされています。泉涌寺という名前は、境内の一角から清水が湧き出したことに由来し、その清らかさから「泉が湧く寺」として尊ばれました。
現在の伽藍が整えられたのは鎌倉時代、名僧 俊芿(しゅんじょう) による中興以降。俊芿は宋(中国)に渡って仏教を深く学んだ人物で、帰国後に泉涌寺を再興。宋風の建築や儀礼を取り入れ、寺の格式を飛躍的に高めました。
その後、歴代天皇が次々と崇敬を寄せ、皇室ゆかりの寺としての地位が確立します。
室町・江戸時代を通じて盛隆し、今日では皇室の菩提寺という特別な位置付けから、多くの参拝者が厳かな空気を求めて訪れています。
◆◆ 泉涌寺の見どころ
◆ 仏殿(本堂) ― 宋風の壮麗な建築美を体感

画像出典:有料素材サイト「ACフォト」
泉涌寺の中心伽藍である 仏殿 は、鎌倉時代の宋風建築を色濃く残す荘厳な建物。
内部には釈迦・阿弥陀・弥勒の三尊像が安置され、落ち着いた空気が漂います。
仏殿の周囲には回廊があり、静かな庭園を眺めながらゆっくりと巡れるのも魅力。
日差しが射し込むと柱の陰影が美しく、写真では伝わりにくい深い輝きがあります。
大門をくぐると長い下り坂になっていてその先に仏殿があります。
門の向こうが下り坂になっている神社仏閣は初めて見たので、大雨が降ったら水に浸かってしまって貴重な文化財が水浸しになってしまうんじゃないかと気になって調べてみたところ、2010年と2015年に泉涌寺周辺で床上浸水があったそうです。
泉涌寺は大丈夫だったんでしょうか?
◆ 舎利殿 ― 皇室の祈りが込められた聖なる空間

泉涌寺の仏殿と舎利殿
画像出典:有料素材サイト「ACフォト」
仏殿の横に建ち、泉涌寺を象徴する建物のひとつが 舎利殿。
ここには釈迦の歯(仏牙舎利)が奉安され、古くから特別な信仰を集めてきました。
舎利殿は皇室ゆかりの儀式が行われる神聖な場所でもあり、その格式は全国でも随一。訪れると静寂が深まり、自然と背筋が伸びるような厳かな雰囲気があります。
◆ 御座所庭園 ― 皇室の御座所としての風格を今に伝える庭園
泉涌寺の中でも人気が高いのが 御座所(ござしょ)と庭園。
江戸時代、後水尾天皇が寄進した建物で、皇室の住まいとして使用された背景から、建築も調度も極めて気品があります。
庭園は池泉回遊式で、静かな池と優雅な植栽が調和し、まさに“御所の庭”という雰囲気。
四季を通じて表情が変わり、特に新緑と紅葉の季節は絶景です。
◆ 涅槃図・歴代天皇陵など泉涌寺ならではの見どころも
泉涌寺では毎年春に巨大な 釈迦涅槃図の公開 が行われます。期間は10日間です。
日本最大級といわれる迫力ある仏画で、細部まで丁寧に描かれた世界観は圧巻。
さらに、境内周辺には後水尾天皇陵・東山陵・月輪陵 など歴代天皇の陵墓が点在し、泉涌寺が「御寺」と称される理由を体感できます。
◆ 霊明殿・歴代天皇の位牌を安置する格調ある佇まい

画像出典:有料素材サイト「ACフォト」
何度も火災で焼失し、現在建っているものは明治17年に明治天皇の勅許により宮内省によって再建されたものです。
皇室との結びつきが強かったために、焼失後の早期に再建されていて、内部には四条天皇の木造彫像や、歴代天皇の位牌が安置されています。
通常は非公開なので外部から建物を見ることしかできませんが、宮殿建築の格調ある宸殿様式の建物は見る価値はあると思いますよ。
◆◆ 泉涌寺の御朱印
泉涌寺では数種類の御朱印が授与されています。
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泉涌寺 揮毫(直書き)
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霊明殿
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楊貴妃観音 など通常の御朱印7種(300円)
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季節の特別御朱印 など
寺院全体が広いため、ゆっくり巡りながら参拝するのがおすすめです。
◆◆ アクセス
所在地:京都市東山区泉涌寺山内町27
最寄り駅:JR奈良線「東福寺駅」より徒歩約17分
または京都市バス「泉涌寺道」下車 徒歩12分
境内は広いため、歩きやすい靴がおすすめです。
◆◆ 拝観料金
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一般:500円
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小中学生:300円
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特別拝観:500円(中学生以上)
◆◆ 周辺のおすすめ神社仏閣(徒歩圏)
◆ 今熊野観音寺
泉涌寺の塔頭の一つで、子授け・病気平癒などの信仰が篤い寺院。紅葉の名所としても知られています。
◆ 東福寺
通天橋の紅葉で有名な大寺院。泉涌寺とセットで巡る参拝者も多く、歴史的な関わりも深いスポットです。
◆ 新日吉神宮(いまひえじんぐう)
平安末期創建の古社で、厄除けの信仰がある静かな神社。泉涌寺から歩いてアクセス可能です。
◆◆ 泉涌寺のトリビア(豆知識)
★ トリビア①:泉涌寺が「御寺」と呼ばれる理由
天皇の菩提寺として、歴代天皇の葬送儀式や記念の行事が行われてきたことから、いつしか“御寺(みてら)”と敬称されるようになりました。
★ トリビア②:境内から湧き出る「清水」が寺名の由来
俊芿が創建の際に発見した湧水が非常に清らかで「泉が涌く寺」として名付けられたと伝わります。
★ トリビア③:舎利殿の仏牙舎利は日本でも特に貴重
中国・宋から伝わった釈迦の歯(仏牙舎利)が奉られており、寺の格式の高さを象徴しています。
◆◆ まとめ ― 皇室の祈りと歴史が息づく、荘厳で静寂な寺院
泉涌寺は、京都の寺院の中でも特に歴史的・精神的価値の高い場所です。
皇室との深い結びつき、宋風の優雅な建築、御座所庭園の美しさ。
どれを取っても他の寺では味わえない独特の不思議な魅力があり、静寂の中に深い祈りを感じられます。
観光としてはもちろん、心を落ち着けたい時にも訪れたい寺院。
東山散策と合わせて、ゆっくり時間をかけて巡るのがいいですね。
できれば人の少ない早朝がいいですよ。

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