東寺(教王護国寺)|空海が遺した密教の宇宙を体感する京都の名刹

斜め右前から撮影した東寺講堂。空海が構想した立体曼荼羅の中心となる建物 洛南エリア
東寺の講堂(筆者撮影)

京都駅からほど近い場所にありながら、境内に一歩足を踏み入れると、そこには千年以上の時を超えて受け継がれてきた真言密教の世界が広がっています。
世界遺産にも登録されている東寺(とうじ)は、弘法大師・空海が真言密教の根本道場として築き上げた寺院です。

私は日本で一番の偉人は誰かと聞かれたら、迷わず空海と答えます。
仏教の教えによって国を治めようとしていた時代に遣唐使として海を渡り、わずかな期間で密教の真髄を習得。帰国後は宗教だけでなく、書・土木・思想の分野でも類まれな才能を発揮しました。

その空海が朝廷から賜り、真言密教の道場とした東寺には、これまで何度も足を運んできました。
訪れるたびに、新しい発見と深い感動があります。


東寺の歴史と空海という存在

東寺は、平安京遷都にともない国家鎮護の寺として建立されました。
正式名称は教王護国寺。その名の通り、仏の教えによって国を守るという大きな役割を担っていました。

唐から帰国した空海は、その卓越した知識と人格を朝廷に認められ、東寺を真言密教の根本道場として託されます。
それ以降、東寺は単なる寺院ではなく、密教思想を体現する空間そのものとして整えられていきました。

空海は、日本では三筆の一人に数えられるほどの書の名手であり、また満濃池の改修に携わるなど、土木技術にも精通していました。
僧侶という枠を超えた、まさに総合的な天才だったと感じます。


圧倒的な迫力を誇る講堂の立体曼荼羅

立体曼荼羅が納められている東寺の中心的建物・講堂


東寺・講堂 筆者撮影

東寺で何度見ても圧倒されるのが、講堂に安置された立体曼荼羅です。

曼荼羅といえば絵画で表現されるものが一般的ですが、空海はそれを立体で表現するという、当時誰も考えなかった方法を選びました。
中心には大日如来、その周囲に不動明王や金剛波羅蜜多菩薩など、21体の仏像が配置されています。

その空間に立つと、仏像一体一体から強い存在感を感じます。


まるで「すべて見ておるぞ」と語りかけられているようでありながら、不思議と心が落ち着き、どこか安心する感覚もあります。

信仰の有無を問わず、人の心に直接働きかけてくる空間
これこそが空海の思想の深さなのだと感じました。


日本一高い木造建築・五重塔の存在感

木造建築物としては日本一の高さを誇る東寺・五重塔


日本一の高さの木造建築物 東寺・五重塔(筆者撮影)

東寺のシンボルともいえる五重塔は、高さ約55メートル。
木造の塔としては日本一の高さを誇り国宝に指定されています。

境内のどこから見ても目を引くその姿は、京都の街のランドマークのひとつです。
下に立って見上げると、自然と「やはり空海はすごい」という思いが込み上げてきます。

五重塔の内部は通常非公開ですが、私は一度、特別拝観の際に内部に入ることができました。
内部の四方には金剛界曼荼羅が描かれ、中央の心柱は大日如来を象徴しているとされています。

その空間に立ったとき、「これは母親の胎内にいる感覚に近いのではないか」と思いました。もちろん実際の記憶があるわけではありませんが、それほど包み込まれるような安心感があったのです。


金堂と境内に漂う密教の空気

国宝に指定されている東寺・金堂


国宝に指定されている東寺・金堂(筆者撮影)

東寺の金堂は、力強くどっしりとした建築で、国家鎮護の寺としての格式を今に伝えています。
本尊の薬師如来像を前にすると、華やかさとは異なる、厳かで静かな力を感じます。

境内を歩いていると、観光地でありながらも、どこか修行道場のような空気が漂っています。
それは、空海がここを「生きた密教の場」として整えたからなのかもしれません。


アクセスと拝観料金

東寺は京都駅から徒歩圏内という、非常にアクセスの良い場所にあります。

・JR京都駅から徒歩約15分
・近鉄「東寺駅」から徒歩約10分

車で行く場合の駐車料金:600円/2時間 以降は1時間ごとに300円(毎月21日は駐車場の利用はできません。)

拝観エリアごと、また季節によって料金が設定されていますが、講堂と金堂(セット料金)は特におすすめです。
※拝観時間・料金は変更される場合がありますので、最新情報は公式案内をご確認ください。


周辺のおすすめ神社仏閣

東寺の周辺にも、歴史ある寺社仏閣が点在しています。

・西寺跡(平安京時代の寺院跡)
・六孫王神社(清和源氏ゆかりの神社)
・羅城門跡(平安京の正門跡)

東寺とあわせて巡ることで、平安京の歴史をより立体的に感じることができます。


東寺を訪れて感じたこと

私が空海という人物を知る入り口になったところが東寺です。

東寺は、ただ「見る」場所ではなく、感じ、考え、心と向き合う場所だと思います。
空海が何を考え、何を伝えようとしたのか。
それを千年以上の時を超えて、今もなお体感できる寺院は、そう多くありません。

何度訪れても新しい発見がある東寺。
京都を代表する寺院として、そして日本仏教の核心を知る場所として、ぜひ一度じっくりと訪れてほしい場所です。

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